オレンジ・ドロップ



「じゃあ、どういう意味?」

笑いながら小首を傾げる燿の仕草が、わざとらしくて腹が立つ。


「もういい」

燿を上目遣いに睨んで背を向ける。

早足で歩き出すと、すぐに燿が追いかけてきた。

隣に並んだ燿が、あたしの耳元に顔を近づけてささやく。


「この前みたいなちゅーは、人いないとこでね」

燿の発言に、ぼっと火が出そうなくらい顔が熱くなった。


「何言ってんのよ。燿なんかに、二度とキスさせるわけないでしょ!」

つい大きな声が出てしまって、はっとした。

また周りの視線を集めてしまって、もうほんとに頭から袋でもかぶって逃げ出したくなる。


「柑奈、声大きいよ?」

顔を赤くして身を縮こめるあたしを、燿が揶揄うように笑う。


「うるさい……」

そもそも、全部燿のせいなのに。

明日、変なウワサとかたてられてたらどうしよう。

横目で燿を睨むと、これ以上目立たないように急ぎ足で学校を出た。