口元を隠しながら威嚇するみたいにジッと睨み上げると、燿がけらりと笑った。
「何してんの、柑奈。あ、もしかしてちゅーされると思った?」
悪戯っ子みたいにきらっと瞳を輝かせてそう言うと、燿はあたしから顔を離した。
「柑奈がしてほしくても、さすがにこんな人目につくとこじゃできないって」
燿が意味ありげに周囲に視線を巡らせる。
はっとして周りを見ると、あたしと燿は遠巻きにクラスメートや同級生たちの注目を集めていた。
「ば、バカ!周りに誤解されるようなこと言ったりしたりしないでよ!」
もう恥ずかしいどころの話じゃない。
今の燿とのやり取りの一部始終を巻き戻して全カットしたい。
「俺は別に何もしてないよ。俺の口塞ぎたいって最初に言ったの柑奈じゃん」
にこっと笑う燿の声のボリュームはやっぱり大きい。
「あたしが言ったのは、そういう意味じゃなくて……」



