オレンジ・ドロップ



どうしてあたしのほうがちょっと押され気味なんだ……

頬の火照りを悟られたくなくて、燿から視線を外す。

だけど燿がそれまでより一層顔を寄せてくるから、視線の逃げ場がなくなった。

きわどい距離であたしの顔を覗き込みながら、燿が悪戯っぽく笑う。


「柑奈がしないなら、俺が塞いであげよっか?」

え、塞ぐ……!?

燿の言葉があたしに、昨日のキスを鮮明に思い出させる。

ちょっと強引に、だけど優しく何度も重なった燿の唇。

あれは、燿なのに燿じゃなくて。

胸の高揚がものすごかった。

あたしが好きなのは響のはずなのに。

燿は、年下のちょっと生意気な幼なじみなはずなのに。

顔を傾ける燿が、ふと真顔になる。

曇りのない真っ直ぐな目でジッと見つめられて、ドキリとした。

昨日と同じ、あたしの知らない男の子みたいな表情。

でも、これは燿だ。


「や、めてよ。近いから!」

つかまれていないほうの腕で、唇を守るようにガードする。