「そうなんだ。響のことばっかり目で追ってるから、てっきり俺のことなんて見えてないのかと思った」

「追ってないから!ていうか、声大きい」

笑いながらわざとらしい声でそんなことを言うから焦る。

周りには教室から出てきてるクラスメートだっているのに。

聞かれたらどうしてくれるんだ!


「えー、そうかな。帰ってく響のことしか見てなかったじゃん」

それでもボリュームをあまり落とさず響の名前を口にする燿。

こいつ、あたしが焦るのを面白がってる。


「ほんとやめて。口塞ぐよ?」

腕を引っ張って、あたしより背の高い燿を引き寄せる。

その口を思いきり押さえつけてやろうと本気で手を伸ばしたら、燿がにやりと笑ってあたしの手をつかまえた。


「いいよ?塞いでも」

燿が腰を屈めてあたしの方に顔を近づけてくる。

燿が首を傾けて顔を覗き込んでくるから、不本意にも頬がジリジリと熱くなった。