響は笑いながら燿に何か話しかけると、そのまま手を振って離れて行った。

遠くなっていく響の姿を目で追いかけていると、燿があたしを呼んだ。


「柑奈、まだー?」

燿の声が大きく響いて、教室に残っていたクラスメートたちの注目を浴びる。


「柑奈、何かあったら教えてね」

何か勘付いたのか、彩音があたしの肩を叩いてにやりと笑った。


「何かって何?とりあえず、あたし行くね。あいつ、大声で人の名前呼んでほんと恥ずかしい……」

彩音と奈津にぶつぶつ愚痴りながら、スクールバッグを持って燿の元へと急いだ。


「教室の前で人の名前を大声で連呼しないで」

「だって柑奈、目合ってるのに無視するから」

あたしを見下ろしながら、燿が悪びれる様子もなくにこりと笑う。


「だからって大声で名前呼ばれたら恥ずかしいじゃない。2年の教室の廊下に1年が立ってるだけで目立つんだから」

未だににこにこ愛想よく笑っている燿をちろりと見上げる。

1年だから、っていうか……

燿だから目立ってたのか。

クラスの女子が何人か騒いでたみたいに、(はた)から見れば、まぁイケメンだし。