丸一日が過ぎても腹が立つくらいに燿が頭の中を支配するから、何とかして燿にからかわれた記憶を消し去りたいのに……
どうして、教室の前までやって来るんだ。
「柑奈、一緒に帰ろー」
SHRが終わると、燿がにこにこ笑いながらあたしに手を振った。
「柑奈、あれ誰?」
燿を何度もちらちら見ながら、彩音と奈津が興味津々で近づいてくる。
「あれ、響の弟。あたしの妹と同級生で、幼なじみ」
「へぇ、じゃぁ1年の子なんだ」
「どうして茅原の弟が急に柑奈のこと誘いに来たの?」
彩音と奈津にはまだ燿とのことを話してない。
ふたりはあたしがまだ響を好きなことを知ってるし、燿にからかわれたことなんて言いづらい。
「さぁ、知らない」
隠し事をするのは苦手。
燿とのキスを思い出して耳が熱くなるのがばれないように、彩音と奈津からちょっと顔をそらす。
そのとき、響が燿に近づいていくのが見えた。