SHR中、何気なく廊下に視線を向けると燿と目が合ってぎょっとした。

あたしと目が合ったのがわかると、燿がにこっと笑って手を振ってくる。

それに気づいたあたしの近くの席の女子たちの間でちょっとしたどよめきがおこった。


「ねぇ、廊下にいるイケメン誰?」

「今、こっちに向かって手振ってくれてたよね」

「2年じゃなさそうじゃない?」

「にこってした顔、めっちゃ可愛いかったんだけど」

周りの女子たちのひそひそ話にこってしたこっそり耳を傾けながらも、燿とこれ以上目が合わないように机に伏せる。


『柑ちゃん、俺今から本気出すから』

不敵な笑みを浮かべる燿の言葉がふと脳裏に思い浮かんで、机に伏せた顔が熱く火照った。

本気って、何だ!?

おかしなことを言う燿の前から走って逃げ出したのは昨日のこと。

耀は逃げ出したあたしを追いかけては来なかった。

本気出すとか言っといてあたしが逃げても放置なんだから、やっぱりからかわれたんだ。

それはわかってたのに、燿のキスや言葉が気になって気になって仕方なくて。

昨日は昼休みを過ぎた頃に保健室から戻ってきた響にすぐに気づけなかったくらいだ。