「ごめんな、柑奈。気持ちは嬉しいけど……俺はこれからも柑奈とは今まで通り幼なじみとして仲良くしたい」

嘘だ……あたしはそんなの信じない。

響の話が全く受け入れられない。


「そんなの嘘だっ!」

あたしは床に落ちたスマホを握りしめて絶叫すると、響の部屋を飛び出した。

勢いよく階段を駆け下りていくと、大きな物音に気付いた響のお母さんがリビングから出てきた。


(かん)ちゃん?一体どうしたの?」

心配そうなおばちゃんの声が聞こえたけど、立ち止まってる心の余裕なんてなかった。

そのまま勢いよく玄関を飛び出して、響の家から5軒先の角を曲がって2軒目の自宅に向かって走る。


「あれ?柑奈じゃん」

だけど5軒先の角を曲がったとき、向こうから歩いて来たやつにぶつかった。


「怖ぇ顔して、どうしたの?」

ぶつかったそいつが、先を急ごうとするあたしの二の腕をつかんで揶揄うように笑う。