オレンジ・ドロップ



あたしはショックだよ。

響が梨里と付き合ってたこともそうだけど、響からも梨里からもそれを教えてもらえなかったこと。

お互いを好きだったってことすら知らせてもらえなかったこと。

保健室でさっきの会話を聞かなかったら、あたしはこのままずっと、ふたりが付き合ってることすら知らないままだった。

いろいろ、全部ショックだ。

燿はあたしに手をつかまれたまま、何も答えなかった。


「燿は梨里のこと好きなんじゃないの?」

同い年の燿と梨里は、小さい頃から特に仲がいい。

直接確かめたことはないけど、あたしはいつも燿が梨里のことを優しい目で見てることを知ってる。

だから、燿は梨里のことが好きなんじゃないかってずっと思ってた。

それなのに、あたしよりも先に響と梨里が付き合ってることを知ってたんだから。きっと辛かったよね……

微動だにしない燿の背中を、切ない想いで見つめる。