オレンジ・ドロップ



「え、ほんとに?それ、響だったりして」

にやりと笑いながら口にした燿の言葉。

これも、冗談だったんだと思う。

だけど、あたしはそれを冗談としては受け止められなくて。

燿から視線をそらして俯いてしまった。


「そういえば、さっきからりぃいなかったわ……」

燿が小さくつぶやく。

そのつぶやきに反応して思わず顔を上げると、今度は燿が気まずそうにあたしから視線をそらした。

そういえば、燿は響の彼女が誰か知ってるって言ってた。

あたしが響に振られたときから、燿はわかってたんだ。

響があたしの妹の梨里と付き合ってるって。


「保健室行くのはやめたほうがいっか。お邪魔だし」

燿がふざけたみたいな口調でそう言って、あたしに背を向ける。

そのままあたしの前から立ち去っていこうとするから、その左手をつかんで引き止めた。


「ちょっと待って。響が梨里と付き合ってること、いつから知ってたの?燿はショックじゃないの?」