カタンとベッドが揺れる音がして、カーテンの下から見えていた彼女の足が床から離れる。
「響、今がっこ……」
「でも、誰もいないよ」
「だけど……」
「りぃ」
響がもう一度甘く優しい声で彼女を呼ぶ。
その声を聞いた瞬間、身体中の血液が逆流したみたいに鼓動がドクドクとめちゃくちゃに激しく鳴り出した。
カーテンの向こうから聞こえてくるのは、響と彼女の甘い息遣い。
耳を塞ぎたいのに塞げない。
左腕のシュシュを右手でギュッと押さえる。
響の彼女はあたしの……
唇をきつく噛み締めると、ドアをそっと閉めようとかそんな気遣いも忘れて、急いで保健室の外に出た。
教室に戻ろうと廊下を速足で歩いていると、階段の下で上から降りてきた燿とタイミング悪く鉢合わせた。
「あれ?柑奈だ。どうしたの?」
「別に。そっちこそどうしたの?もうすぐ授業始まるよ」
「柑奈、なんか顔色悪くない?」
平静を装って通り過ぎようとしたのに、燿があたしの二の腕を掴んで引き止める。



