オレンジ・ドロップ





「そこの席は……茅原、今日欠席か?」

数学の授業が始まって、先生が名簿をチェックする。

ひとつ前の授業には出ていたはずの響の席が、なぜか今は空席だった。


「あ、先生。響、頭痛するって保健室」

「おー、そうか」

休み時間中に声が聞こえないなと思ってたけど、保健室なんだ。

あたしはちらりと、後方の響の席を盗み見た。

響に振られてから、数日が経つ。

今までみたいに幼なじみとして仲良くしたいと言った言葉通り、あたしに対する響の態度は変わらない。

通学途中に出会ったら声をかけてきて一緒に登校するし、教室にいてもそばを通るときは話しかけてくる。

むしろあたしの方が意識してしまって、響に自然に声をかけれない。

でも、頭が痛いっていうのは少し心配だ。

朝は元気そうだったけど、大丈夫かな。

響のことを気にし出すと、そればかりが気がかりで。授業の内容が全く頭に入ってこない。