オレンジ・ドロップ


響が困ったように眉を寄せるのが見えて、自分の言ったことを後悔した。

何言ってるんだろ。

でも、響だって悪い。

昨日の今日なのに、まるで何事もなかったみたいに普通なんだもん。

変わらず普通に優しいんだもん。


「柑奈、ごめん。でも俺、柑奈が思ってくれてるみたいな恋愛感情の好きとは違うけど、お前のこと好きだし。10年以上一緒だったのに、今さら気まずくなりたくないし」


『でも、彼女いるのに必要以上に優しくなんてしてほしくない』

そんなふうに言い返したかったけど、できなかった。

振られたけど……それでも、幼なじみの関係までは壊したくない。

彼女がいるってわかっても、あたしはまだ響が好きだった。


「あたしこそごめん。蒸し返すようなこと言って」

謝ると、響がにこりと笑い返してくれる。

その笑顔に今も性懲りもなくドキドキしてしまう自分が嫌だ。