「さぁ、帰ろー」
今度こそ燿の前を歩き出そうとしていたら、後ろから伸びてきた腕につかまった。
同じ学年の生徒たちがちらほらと行き交う廊下で躊躇いなく抱きしめられて、恥ずかしさと緊張で体温が上昇する。
「燿、ここ、まだ学校……」
「うん、知ってる」
振り向くと、燿があたしのあげた柑橘系ののど飴を口に放り込んでニヤリと笑った。
「あの、すごく恥ずかしいんだけど」
周りから向けられる視線に目を伏せながら小さく抗議したら、肩に回された燿の両腕が、抗えないくらいの強い力でぎゅーっとあたしを抱きしめた。
「俺は別に恥ずかしくないよ。ほとんどが知らない人だし」
自分の学年の廊下じゃないからって、燿が無責任な発言をする。
「燿は良くても、あたしは顔見知りいるんだけど」
困ってそう言ったら、燿があたしの耳元でクスクスと笑った。
「だって、こんなとこで餌付けする柑奈が悪いんじゃん」
え、餌付け……?
あぁ、のど飴のことか。



