「ねぇ、燿。席替えであたしと響の席が近くなったからヤキモチ妬いたの?」
「は?妬いてねぇよ」
笑いながら聞いてみたら、燿がすごい勢いであたしを振り返って、それを強く否定した。
「なんだ、つまんない。あたしたちも早く帰ろう」
すごい形相で教室からあたしを連れ出したくせに、案外そっけない燿の態度に頬を膨らませる。
そうして燿より数歩先を歩き出したとき、ふとあることを思い出した。
歩きながらスクールバッグの中を探って、目当てのものを引っ張り出す。
そうして振り返ると、燿の右手を両手で包むようにぎゅっと握った。
「これ、あげる」
あたしが燿の手のひらに載せたのは、ちょうど持ち合わせてた柑橘系ののど飴。
昔あげたらしいオレンジ味じゃないけど……
仕方ない。さっき知ったばかりだしね。
「これからも好きでいてね」
ぱっと両手を離して微笑みかけると、燿が茫然とあたしを見下ろしていた。



