それから、机の上に思いきり身を乗り出すと、内緒話する距離まであたしの耳元に顔を寄せてくる。
驚いてドキッとしたあたしに、響がささやいた。
「知ってた?燿が昔、柑奈のこと好きだったって」
「え?」
響の顔が耳元から離れてから、あたしは何度も目を瞬かせてた。
「柑奈、こんくらい小さい頃、燿の誕生日にあいつにオレンジ味の飴やったの覚えてる?」
燿が片手を腰くらいの位置で止めて、首を傾げる。
「燿の誕生日……?」
そんなことあったっけ。
はっきりとした記憶にはなくて、黙って考え込んでいたら、響がクスッと笑った。
「覚えてないか。そのオレンジ味の飴、燿が生まれて初めて親以外からもらった誕生日プレゼントだったんだってさ。飴一個で惚れるとか、ガキだなーって可笑しかったけど、それからしばらく『柑ちゃん、柑ちゃん』って柑奈のあと付きまとってただろ」
「んー」
そういえば、やたら燿に懐かれてた時期はあったかもしれない。



