オレンジ・ドロップ



「燿、行かなきゃ。遅刻す……」

燿を促すように音楽室の時計に視線を向けたら、突然強い力で後頭部を押さえつけられた。

あたしを引き寄せる力は雑で乱暴なのに、そのことが嘘みたいに、燿が優しく丁寧に唇を合わせてくる。

あたしの全部を食い尽くすみたいな甘く優しいキスに、頭がぼんやりとして、聞こえてくるチャイムの音がだんだんと遠くなる。

授業開始のチャイムが鳴り続けている間、繰り返し唇を重ねてきた燿は、それがようやく鳴り終わってしばらくしてから、もったいぶるようにゆっくりと唇を離した。

唇が離れてもあたしを熱っぽい目で見つめる燿は、年下なのにちょっと色っぽかった。

ぼんやりとした頭で燿を見上げる。


「燿、授業……」

小さくつぶやいたら、燿があたしの耳元に唇を寄せた。


「出るのやめて、このまま一緒にいようよ」

燿が猫なで声で甘えるようにささやいて、あたしの耳を舌先でちろりと舐めるから、びくりと身体が震えた。