音楽室の壁には有名な音楽家たちの肖像画がいくつかかけられている。
誰もいない音楽室にひとりで入ったら、肖像画の中にいる音楽家たちの目が一斉にこっちを見ているようで少し怖い。
昼間だけど、誰もいない音楽室は少し不気味だった。
早く筆箱とって戻ろう。
壁のほうを見ないように、急いで自分が座っていた席まで走る。
あたしが座っていた席の引き出しの中に、探していた筆箱はちゃんと入っていた。
「あった」
無駄に小さく声を出して、引き出しから筆箱を引っ張り出す。
そのとき、背後で開けっ放しにして入ってきたはずの音楽室のドアが閉まる音がした。
驚いて顔をあげたら、壁の肖像画のひとりと目が合う。
ひたひたと床を擦るようにして、誰かが近づいてくる気配がする。
だけど、怖くてすぐに振り返れなかった。
こんな真っ昼間にオバケ……とかないよね。
無人の音楽室の雰囲気が、あたしを臆病にさせてるだけだ。



