唇が重なるのを予想してきつく目を閉じると、燿があたしに意地悪くささやいた。
「柑奈、もう一回言って」
ギリギリのところで焦らされて、思わずパッと目を開ける。
「え……?」
困って視線を避けたあたしの唇に燿がそっと右手の親指をのせた。
「言ってよ、もう一回」
熱っぽい目であたしを見つめる燿の親指の先が、焦らすように唇の上をゆっくりと這う。
「柑ちゃん?」
誘うような燿の甘い声に惑わされて、あたしは小さく口を開いていた。
「燿。キスして……」
心臓が今までにないくらい激しくバクバクと音を立てる。
余裕のないあたしとは反対に、燿は大人びた表情で満足気に口角を引き上げた。
「好きだよ、柑奈」
唇が重なる直前、燿がつぶやく。
キスする間際に頬に触れた燿の手が、いつもより熱くて、その指先が少しだけ震えてた。
唇から伝わる燿の温度が、あたしの身体を熱くする。
これ以上ないくらいの幸せで、胸がいっぱいだった。



