「今朝、駅で無視した仕返し」
「そんなやり方ひど……」
言い返そうとしたら、思いがけず涙がぽろりと落ちた。
突然また泣き出したあたしを、燿が困惑の目で見つめる。
「柑奈?」
「ごめん、違う。なんか、ほっとしたら涙出てきて……」
燿があのひとと何でもないってわかって安心してしまったのか、自分でもコントロールできないくらいに涙が溢れてきて止まらない。
涙を拭くために燿に包まれた手を解こうとしたら、燿が呆れたように小さくため息を吐いた。
「どうして柑奈ばっかり泣くんだよ。無視されたうえに響と楽しそうに話してる柑奈見て、俺だって相当傷付いてんだからな」
ふて腐れた声でそう言いながら、燿は両手であたしの頬を包んで涙を拭ってくれた。
「柑奈、全然わかんない。キスしたり抱きしめたら、結構いい反応返ってくんのに、いくら口で好きだ、好きだって言ってもあんまり本気にしてくれないし。付き合ってって言ったって、はぐらかして保留にするし。そのくせ、俺が好きなのやめようとしたら、こんなふうに泣いて惑わすし。どういうつもりだよ?」



