駅前で燿と並んで立つあのひとを見た瞬間から覚悟はできていたはずなのに。
燿が耳元に投下した言葉の衝撃が大きすぎて、足元から崩れ落ちそうになる。
思わずふらついたあたしの腕を、燿が引っ張りあげるようにしてつかんだ。
「俺の、親友の」
それから、やけにもったいぶるようにあたしの耳元にまた、ゆっくりとささやく。
燿の……?親友?
燿の言葉を脳が正確に理解するまでにしばらく時間がかかった。
それはいったいどういう……
呆然と見上げると、燿がクッと小さな声をたてて笑った。
「あのひと、俺の友達の仁織の彼女」
「え?仁織……?」
その名前には聞き覚えがあった。
たぶん、梨里ともそれなりに仲が良い子で、たまに話に出てくる。
「俺らが中学のとき、あのひとうちの学校の高等部にいたんだよ。中等部でも、男の間では『きれーだ』って結構有名だったんだけど。柑奈、知らない?藤村 美姫先輩」



