少し動けば唇が重なりそうな距離に、心臓がざわめく。
思わずぎゅっと目を閉じたら、燿の嘲笑う声がした。
「柑奈の嘘吐き」
「え?」
驚いて目を開くと、口元を歪めて笑う燿の瞳が切なげに揺れていた。
「もし仮に柑奈が俺のこと好きだとするだろ。そしたら、朝俺のこと無視したことにも響といたことにも説明つかねぇもん。柑奈言ってたじゃん、すげぇめんどくさそうに。『燿の話はやめて』って」
あたし、そんなふうに言ったのかな。
確かに、今朝、響に燿とのことをからかわれて、深く考えずに言葉を返したことは覚えてる。
それはただ、恥ずかしいのを誤魔化すためだけのものだった。
でも、つまらないプライドで燿を避けたあとだったし、偶然にも響と一緒だったし。
聞かれたタイミングが悪かった。
「響のことまだ好きだから、俺とのことを変に疑われたくなかったんでしょ?」
切なげな表情とは裏腹に、燿が意地悪い声で問いかけてくる。
「そのくせ、美姫さんの前で泣いたりして。マジで嫌になる……」
続けて燿が低い声でぼやいて、煩わしげにため息を吐く。



