オレンジ・ドロップ



「美姫さん、俺、もう行くね。中途半端にしか付き合えなくてごめん」

特に未練のなさそうな、あっさりとした声の調子で燿が彼女にそう告げる。


「うん。ありがとね、燿くん。付き合ってくれて」

そう答えた彼女のほうにも、全く未練がなさそうだった。

にっこりと微笑みながら燿にひらひらと手を振る彼女の姿に、ますます困惑する。

何?どういうこと?

燿とこのひとは付き合ってるんじゃないの?

そういえば、燿がさっき中途半端にしか付き合えなくてごめんとか言ってたけど。

もしかして、今のは別れの言葉?


次々と湧き上がる疑問に目眩がしそうになる。


「柑奈、行くぞ」

偉そうな声でそう言うと、燿はまだ混乱中のあたしを促して彼女に背を向けた。


「待って。行くってどこに?」

「とりあえず、邪魔されずに話できるとこ」

あたしの耳元にぼそりとささやくと、燿があたしの背中を押した。