「お、おはよう……」
視線をうろうろさせながら挙動不審に挨拶を返すと、響があたしの頭に手のひらをのせてぽんっと撫でていった。
な、何……?あたし、昨日振られたよね……?
そんな自然に撫でられたりしたら、響が触れたところから発熱しそうだ。
「柑奈、今の何?」
「あんた、ほんとに茅原に振られたの?」
響があたしから離れて友達のところに行ってしまうと、彩音と奈津が興奮気味に顔を近づけてきた。
「うん、振られた……と思うんだけど」
響の考えてることがよくわからない。
響は何も考えずに行動したのかもしれないけど、それがどれほどあたしを一喜一憂させるかわかってないんだ。
あたし、振られたんだよね?
響には彼女いるんだよね?
あんなふうに頭にぽんっとかされたら……
あたし、振られたのに期待しちゃう。
教室の端っこで友達と笑い合ってる響。
そんな彼を盗み見るあたしの心臓は、やっぱりこれまでみたいにドキドキしてた。



