駅で燿を無視したのは確かにワザとだったけど……
それは、燿があたしを落とそうとしてるっていう梨里と響の話を聞いて少し複雑な気持ちになってたからで。
響は全く関係ないし、登校中に出会ったのだって偶然だ。
そこのところだけは、燿に誤解されたくない。
そう思って、口を開く。
「それは……」
「イヤだ。もう、どーでもいい」
だけど燿は、抑揚のない声で投げやりにそう言うと、あたしから額を離して小さく首を横に振った。
「そんなに響がいいなら、もうなかったことにしていいよ」
燿があたしから距離を置くように数歩後ずさる。
壁に背をつけて立ち尽くしたまま大きく目を見開いたあたしを見て、燿がようやく少し表情を和らげた。
「告白も、付き合ってって話も。全部なかったことにして。俺ももう忘れるし」
燿がさっきまでとは違う明るいトーンでそう言いながら、声の調子とは裏腹に苦しげな目をして笑う。



