オレンジ・ドロップ



同時に、ようやく肺に酸素が送り込まれてくる。

軽く咳き込んで呼吸を整えるあたしに、燿がこつりと決して優しくはない強さで、額をぶつけてきた。


「痛っ……」

小さく呻いて上目遣いに見ると、燿があたしを睨みおろしていた。

反射的に肩を震わせたあたしに、燿がふっと皮肉っぽい笑みを浮かべる。


「ねぇ。どうして、駅のホームで目が合ったのに逃げたの?」

「え?」

「気付いてなかった、って言い訳は受け付けないから」

ギクリとして瞳を揺らすあたしを、燿が冷めた目で見つめる。

黙り込んでいると、燿がほんの少しあたしから視線を外して自嘲気味に笑った。


「そんなに響と一緒に登校したかった?響はりぃと付き合ってんだよ。わかってるだろ。それでもまだあいつのことが好き?」

低くつぶやかれた問いかけに、ドキリとする。

はっと目を瞠るあたしを見て、燿が僅かに唇を歪めたのがわかった。


「さっきだって、響といるところを俺に邪魔されたから腹立ってんだろ?」