でも、それはあたしの思い込みだったんだよね……
頬杖をついてため息を吐く。
「おはよう」
「響、おはよう」
そのとき、響が登校してきた。
今までのくせで、つい反射的に教室のドアを見てしまう。
その瞬間、響と目が合った。
すぐに笑いかけられそうになって、慌てて目を逸らす。
「もう、さっきの話題おしまいね」
彩音と奈津にそう話していると、響があたしのほうに近づいてきた。
響の席は、あたしの席の斜め後ろだから仕方ない。
だけど、そばを通り過ぎる彼を妙に意識しまって顔が上げられない。
いつもはうるさいくらいな声でお喋りしている彩音と奈津も、今日はあたしに気を遣っているのか、不自然なくらいに静かだった。
「おはよう、柑奈」
昨日の今日だし、間違いなく素通りされる。
そう思っていたのに、響はあたしの横を通り過ぎるときいつもと変わらない態度で声をかけてきた。
あんまり普通だから、拍子抜けしてしまう。



