オレンジ・ドロップ



「き、今日、梨里は?」

確か、響と学校行くためにあたしよりも少し早く家を出たはずだ。

あたしが訊ねると、響が面白くなさそうに眉根を寄せた。


「駅まで一緒だったんだけど、途中でクラスメートの女友だちに取られた」

「は?」

「なんか、今日誕生日のやつがいるらしくて、仲良いやつらでサプライズすんだって」


あたしに声をかけてきたときは機嫌良さそうだったのに、梨里のことを話す響の声は低くて不満そうだ。


「いいじゃん。毎朝一緒なんだし、たまには友だちに譲ったって。家だって近いし、どうせすぐ会えるでしょ?」

「どうせ、とか言うなよ」

呆れ顔で響を見ると、ますます不満そうな声でそう返された。


「ほんと、梨里のこと好きだね……」

自然にそうつぶやいていたあたしの心の中にあったのは、響に対する呆れにも似た感情で。

そこに、切なさや苦しさは微塵もなかった。