オレンジ・ドロップ



「柑奈?」

脇目もふらずに歩いて、ちょうど学校まであと半分くらいの距離までやってきたとき、追い抜いた生徒のひとりがあたしに話しかけてきた。


「柑奈」

そのまま通り過ぎかけたけど、もう一度呼ばれて仕方なく立ち止まる。

振り返りながら、今は顔を合わせたい相手じゃないなと心の中で思った。

声のトーンで誰だか想像はついていたから、気付かないふりをしたかったけど……

どうせすぐに顔を合わすことになるから、ここで無視したらきっと後味が悪い。


「どうした?急ぎの用事?」

不思議そうに小首を傾げてながら訊ねてきたのは響だった。


「あ、うん。ちょっと……」

「ふーん?でも、柑奈、部活も何かの委員もやってないよな。どうせ、大した用じゃないだろ」

けらりと笑いながら、響があたしに歩み寄ってくる。

そうして隣に並んだ響が、意味もなくあたしの顔を横から覗き込んでくるからドキッとした。