オレンジ・ドロップ



このまま立ち止まっていれば、燿と一緒に学校に行ける。

燿と並んで電車に乗り込む。そんな自分の姿を想像して、慌てて首をぶんっと左右に振った。


そんなことしたら、あたしはまた燿に流される。

だって、ほんの少し前まで、ただの年下の幼なじみだったんだよ……?

ちょっと甘い言葉や態度で揺さぶられたからって、簡単に落ちたりなんてしないんだから。

それは本心と言うよりも、昨日の梨里と響の会話で少しばかり傷ついた、あたしの変な意地だった。


ぐっと唇を引き結ぶと、人混みを抜けてこようとする燿に背を向ける。

いつもだったら人が少ない車両を探して乗り込むあたしだったけど、今日は敢えてホームの人の多いほうへと進んでいった。


「柑奈……」

ホームの騒音に紛れて、燿の声が聞こえてきたような気がする。

だけど、あたしはもう振り向かなかった。