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翌朝、いつもより少し早い時間に家を出たあたしは、眠い目を擦りながら学校へと向かった。
昨日もあんまりよく眠れなかった。
口元に手をあてて欠伸を噛み殺しながら、駅の改札を抜ける。
駅のホームは通勤や通学の人たちで混み合っていた。
あまり人が並んでいない、空いていそうな車両に乗りたいなー。
ぼんやりとそんなことを思いながら、視線を左右に動かす。
そのとき、今通り抜けてきたばかりの改札の向こうから、名前を呼ばれたような気がした。
「柑奈」
気になって振り返ると、あたしに追いつこうと早足で改札に向かって歩いてくる燿の姿が見えた。
振り向いたあたしに軽く手を振り上げた燿が、にこりと笑いかけてくる。
嬉しそうな、無邪気な笑顔に、ドクンと胸が高鳴る。
同時に、昨日聞いた梨里と響の会話が思い出されて、複雑な気持ちになった。
「柑奈」
今度は、名前を呼ばれたのがはっきりとわかった。
燿が人混みをかき分けるようにしながら、あたしの方に歩いてくる。



