ーside尊ー


朝起きると、1件の着信があった。


その相手は、親父からだった。


俺は、親父に電話をかけ直した。


なんとなく、予感はしていた。


ここ最近の、遥香の検査結果が芳しくなかった。


なるべく明日に入院をしてほしいと言われた。



本当は、今日にでも入院してほしいとのことだった。


親父なりに、色んなことを考慮して明日と言ってくれたのかもしれない。



しばらく入院になる遥香のために。



俺は、そのことを遥香に伝えた。



やっぱり。


反応は予想していた通りだった。



嫌だよな。



「遥香、入院と言っても遥香が良くなるための治療のためだから。」



俺の胸で涙をこぼしている遥香を背中をさすりながら抱きしめた。



俺も、一緒に闘うから。



「…私、そんなに悪い?」




「…遥香。正直言うな。ここ最近の検査結果が芳しくなかった。それで、遥香にはしばらく入院してほしいって親父から連絡があったんだ。」




「尊…」




「大丈夫。何も怖がらなくていい。俺が遥香を守るから。絶対、遥香を死なせたりなんかしない。これからも、一緒に生きていくんだから。」





「…私の傍には、尊がいてくれるから大丈夫だよね。」




「傍にいるよ。ずっと。」



早く、遥香を治して元気にしてやりたい。



そのためにも、遥香が悪化しないように治療していくことも大切だった。



辛い思いは、あまりさせたくないけどこればかりは仕方がなかった。




親父から、送られてきた遥香のカルテを見る限り、遥香の心臓は段々と弱ってきている。



きっと、それは自分でも自覚しているはず。



でも、俺に心配かけまいとあるいは、入院したくないから苦しくても黙っていたのかもな。



「尊…行こう?」



しばらく、俺の胸に頭を預けていた遥香がやっと顔を上げてくれた。




「どこに行きたい?」



「んー…あまり遠くなくていいから、普通のデートしたい。」




「そんなに、アバウトな感じでいいのか?どこに行きたいとかはない?」



「じゃあ、尊のお気に入りの場所に連れて行ってよ。」




「俺の?」



「うん!」


万遍の笑みで遥香は頷いた。



ようやく、遥香の笑顔が見られたことが嬉しかった。



「よし、じゃあ準備しようか。」



俺は、遥香を膝の上から降ろしてからそう言った。