1ヶ月ぶりに、私は外に出られた。


「遥香、ちょっとここで座って待ってて。玄関まで車回してくるから。」


尊は、私を外の日陰のベンチに座らせてから車を回しに玄関へ回してくれた。


寒かった季節が、変わりもう梅雨の季節。



たった1ヶ月だけど、その小さな変化がとても早く感じた。



「遥香?ぼーっとして具合悪い?」



「この前までは、寒かったのにって思って。」



「そうだな。もうそろそろ夏だな。遥香が1番体調を気にしないといけない季節になるな。」



尊の言う通り。


夏になると、私は頻繁に貧血を起こしたり動悸が起きるから、心臓移植をしたばかりの私は、少しの体調の変動に気付いて、休まないといけない。


「遥香、大学まで電車通学を1回辞めよう。もうそろそろ、定期もきれるところだったし、俺が大学まで送っていくよ。」



「でも、尊が朝忙しくなっちゃうよ。」



「遥香、もうそんなの気にするな。俺は、遥香に元気でいてほしいから。だから、多少忙しくなったとしても、遥香が気にしなくていいんだよ。」




優しく微笑んで、尊は私を抱き寄せた。




「さぁ、帰ろう。」



「うん。」


再び、尊に抱き抱えられ、私は尊の車に乗った。




車に揺られながら、私は尊の香りに包まれて1人、幸せを感じていた。





「遥香、このまま退院祝いで外食しよう。」




「え、いいの?」




「食事制限のことか?」



「うん。いいの?」




「いいよ。さすがに、脂っぽいものはまだ許可は出せないけど、それ以外なら。ずっと病院食を頑張ってくれたから今日は特別な。」




「うん!」



それから、私と尊は2人で食事を摂った。



ガヤガヤするファミレスは、あまり好きじゃないことを知っている尊は、静かで落ち着いた雰囲気のお店に連れて行ってくれた。




家に帰宅してから、私は尊と一緒に眠っていたベッドに横になった。




「疲れた?」




「うん、少し。」




「んー、じゃあ今日は辞めておこうか。」




「え?」




「遥香って、本当無防備だよな。」




「は!?」




「他の男の前で、そんな顔するなよ。襲いかねない。」




「…。」




「遥香?」




「いいよ。」




「え?」




「尊。私を、尊のものにして。」



私の口が、勝手にそう言わせていた。


だけど、尊ならなにも怖くない。


ずっと、誰かに触れられたり、抱かれたりされることは嫌いだった。



だけど、尊の温もりなら安心できる。



だから、尊に抱かれたかった。




ずっと、私の身体が弱いから、尊にたくさん我慢させてきた。




こういう夜もいいよね。