森の風景をうっすら透かした黒い背中に投げかける。

 ちらりとミェルナの顔に目を向けてスティーヌは答えた。

 「しないな。」

 「……嘘、ついてない?」

 そう呟いてミェルナは立ち止まった。

 「帰るぞ。」

 「ねえ。血がついてるわ。」

滴った血が草を赤く汚していた。

 その小さな血だまりが点々と森の奥へと続いているのを指さす。

 ミェルナの言葉に立ち止まりかけたスティーヌだったが、振り返ることもなくそのまま歩き出した。

 (なんなの。)

 その後ろ姿を見て、ミェルナは体の内側がふつふつと怒りが沸いてくるのを感じた。

 「最近よくそうやってはぐらかすけど、どうして?」

 「……。」

スティーヌは答えなかった。

何のつもりなのだろう。

 「教えてくれないんなら良いわ、自分で答えを探すから。」