狼少年、拾いました。

 心なしか焦っていた気持ちが、そんな場合ではないはずなのにすっと軽くなった。

 渋い顔で黙りこんだスティーヌを見上げ、そのすべすべとした不思議な感触の腕を軽くぽんぽんと叩く。

 「ね、そういうことで大丈夫じゃないかな?」

 スティーヌは何も言わなかった。

 それをミェルナは承諾したと受け取った。

 「じゃあ、すまないけど、世話になります。」

 同じように解釈したレスクがまた尖った歯を見せて笑った。

 「……何か食べる?」
 
 「いや、これ以上迷惑は掛けらんねぇから、大丈夫だ。」

 きっぱり言い切ったレスクだったが、その瞬間彼の腹がぐぅーっと見事に大きな音を立てた。

 ふふ、と思わずミェルナは吹き出した。

 そして、熱があるから食べやすいものがいいわね、と少し嬉しそうに言いながら立ち上がる。

 レスクも断ろうとはしなかった。

 「こういう、食材とか必要なものはどうしてるんだ?村には下りないんだろ?」
 
 てきぱきと料理を始めるミェルナと、黙って彼女を手伝うスティーヌの背中を見るともなしに見ていたレスクだったが、ふと思い付いて訊いた。

 「一週間に一度決まった量を村から分けてもらってるわ。普段の薬の代金の代わりにね。」

 答えながら、ちょっと熱いかも、と白湯を手渡すミェルナ。

 その手は白くて、ほんの少し温かかった。

 「へぇ。買い出しに行かなくていいから楽だな。…ありがと。」

 そう冗談混じりに言ったものの、心の中では少し理不尽に思っていた。