大きな鷲鼻に、裂けるようにつり上がった細くて真っ赤な口はこの世のものとは思えなかった。

 “何か”は見えない壁に骨と皮だけの両手をつき、ペタペタと触って回る。

 しばらくそうしたあと、ミェルナたちをじっと覗き込むように見つめたあと、ズタボロの裾を翻して再び木々の間へ消えていった。

 それがいなくなると張りつめた糸が切れたように、森はいつもの音を取り戻した。

 小鳥のさえずりに、これほど安堵したことはなかった。