「いつまで寝てるんだい!」

 立て付けの悪い扉を叩く音が、ミェルナの目をこじ開けた。

 なにか夢を見ていた気がする…まぁいいわ。

 むくりと起き上がって床に足を下ろす。

 扉の向こうから矢のように飛んでくる声が痛い。

 「早くしとくれ!あんたと違ってあたし達は暇じゃあないんだよ!」 

 急いで扉を開ける。

 立っていたのは村のおばさんだった。

 寝起きのミェルナの姿を見て、彼女は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 「まったく薬師の娘は気楽でいいね!こちとらお日様が顔を出す前から仕事してるよ!」

 「…ロベクさんの調子はどうなの?」

 「あんたなんかの口から旦那の名前なんて聞きたくもないね!」