「本当にごめんね。母さんはこれから遠くへ行かなくちゃならないの。」

母さんは泣いているけど笑っているみたいな変なかおをしていた。

ミェルナはとても悲しかった。

だからきいた。

「どうして?」

母さんは答えてくれなかった。

そのかわり悲しそうなかおで、こう言った。

「愛してるわ。会えなくてもあなたのことはいつもおもっているからね。」

母さんはぎゅっとミェルナを抱きしめて、それから……

「おい、大丈夫か?」

スティーヌの声でミェルナは夢の底から引き上げられた。

「…母さんは、どこ?」

ぽつりと言うミェルナにスティーヌは目を(顔についてる目らしい光る2つの玉を)丸くした。

「どこか頭を打ったのか?ほら、今のお前は17だぞ。」

ペチペチと頬を軽く叩かれて、ミェルナの頭から夢の名残が抜けていった。

(そっか。母さんはもう……。)

抱きしめられた感覚は消え、体が虚しかった。

胸がぎゅっと痛むのを我慢して空に目を向けると、夕日が薄い雲を橙色に光らせていた。

「どこか痛むところはないか?」

表情からミェルナが現実に戻ってきたのが分かったスティーヌは優しい声で尋ねた。

「うん……。背中が、痛い。ゴリゴリして。」

水の流れる音が耳に入る……川岸に横たわっているようだ。

パチパチと火が爆ぜるのが聴こえる。

火を焚いているのは……。

「よお。気が付いたか。」