2人はざぶざぶと流れをかき分けて川を進んでいた。

川の水はミェルナの腿の半分まであり、骨の髄まで染み込むように冷たい。

ごうごうと水がミェルナたちを押し倒そうと流れてくる。

川底の石を踏んで転ばぬよう必死で、レスクが何を考えているのか、どこに逃げようとしているのか尋ねる余裕は微塵もなかったが、スティーヌが慌てた様子で叫んだ。

「待て!その先は滝だ!」

「えっ!?」

「だからどうした!?」

スティーヌの方を振り返ってそう叫ぶと、レスクはミェルナを抱きかかえた。

「え、うそでしょ、うそ……きゃあああああ!」


「相変わらず逃げ足は速い奴ですねぇ。」

苔むした地面や草にわずかに残された足跡を辿りながらパルが呟いた。

彼の表情などからは焦りは全く感じられなかった……が視線が川に吸い込まれるまでだった。

「川へ入ったか。」

呟くようにリーガが言うと、パルは肩をすくめて川を下るように歩き出した。

「どのみちそうしていたと思いますね。足跡を追いづらくなりますし……おや、滝がありますね。」

二人は崖のへりに立ち、見下ろした。

かなりの高さだった。

はるか下には滝壺がそこそこ小さく見え、落ちる水がしぶきを上げて靄をつくっていた。

「飛び降りたんですかねえ。この高さじゃ、助からないでしょ。手ぶらで帰るのかあ、申し訳ないなあ。」

パルが手のひらで庇を作って川の水音にかき消されないように大声でそう言い、肩を少し落としたが、リーガは小さく首を横に振った。

「普通の人間ならな。」