ある国の山の奥深くに、小さな村があった。

そこに住む村人たちは、みんながそれぞれを大切にしていた。

誰かの誕生日は村のみんなで祝い、誰かが神様のところへ行けばみんな涙を流しながら見送る。

その日のスープを作りすぎれば隣へ分けるし、ある家の畑仕事の人手が足りなければ鍬を持って向かう。

みんな、仲が良かった。

みんな、笑顔で暮らしていた。

みんな、手を取り合って生きていた。

同じ家に住んでいるとかいないとか、そんなことは関係なかった。

そんな村には一つ、決して破られてはいけない掟があった。

山の獣はとっても、花や草は取るな。

山で迷っても、途中で見つけた小屋には近寄るな。

黒い目の娘には気を付けろ。

魂を吸いとられてしまうから。