僕達は、場所を変えて会話を交わした。

伊藤は、色んなことを教えてくれた。


今日は学校の行事で早く帰れたこと。

最近、文化祭があったこと。

高校は新しい友達ができて、毎日が楽しくて仕方がないということ。

だけど、勉強は難しくて、成績は中学のときよりも下がってしまったこと。

ゲームは、最近はもうやっていないということ。


伊藤はたくさん自分のことを話してくれたが、僕の近況を聞くことはしなかった。


僕が受験に落ちて、立派な引きこもりになっていることを知っているからだろう。

その優しさが、心を締め付けた。


「あ、そういえばさ」


僕は、伊藤にたずねた。


「同じクラスに小幡って女子いたじゃん。

あいつ、今どうしてるか知ってる?」

「へ、なんで?
お前、小幡のこと好きだったっけ?」