色のない部屋。
僕はベッドの上、ただひたすら天井を見つめる。
ここは、病院。
僕の名前は、木戸敏明………というらしい。
“らしい”というのは、実は僕は記憶を失っているのだ。
だから、この病院で記憶を取り戻すべく、入院しているのだと、医者から言われた。
自分の誕生日も、血液型も、覚えていない。
どうやら、記憶を失くす前の僕は何か悪いことをしたらしいのだが、脳がその記憶をシャットアウトしたらしく、どうもその悪いことをした記憶がない。
それどころか、僕が今までどんな人と出会い、どんな生活をしてきたのかさえ、覚えていない。