なんかこれ、少女マンガで見たやつだ。

「先輩を呼び捨てとかできません!」

私がきつく固辞すると、天使ですか?と聞きたくなるほど麗しい顔を曇らせて、

「オレそういう敬語とか上下関係好きやないもん。なんか他人行儀で寂しいやん?」

「…………っ」

世の中にはいるんだな、こういうリアル少女マンガみたいな男子…………。

って、他人行儀も何も他人じゃない!?(あぶな!なんか引き込まれかけた!)

「……名前呼びはさすがに……えっと茜先輩と呼……」

「まぁえーわ、はじめはそれでも。けど敬語は禁止やで!」

「え!?」

「そんであのあと鼻血どうなった?千歳のことずっと気になって心配やってん。まぁ見た感じ傷にはなってないみたいやけど」

「ちょっと千歳ぇ!」

狼狽する私の右腕を、むぎっと誰かに引っ張っられた。さっちだ。"どうなってんの?"って顔に書いてある。

先輩にぶつかって、ふたりで保健室行ったことを話してなかったんだった。

しかも私を注目してるのはさっちだけじゃなく、周りのほとんどの女子の視線が突き刺さる。