健吾の後ろ姿が、ようやく人ゴミに紛れて消えたとき。

聞き覚えのある声がわたしを呼んだ。



「…ユキ」


そこに居たのは、クラスメイトであり親友のユキ。

部活の帰りだったらしく、肩からテニスラケットを背負っていた。


「莉沙何してんの?そんなとこ突っ立って」


「…えっ、と…」


わたし、何してたんだっけ?


そうだ。


確か、フラれて……



「……莉沙?」



あれ?

やだな。

ユキの顔見た途端に、急に涙が出てきちゃった。


「り、莉沙?とりあえず、落ちついて!どっか入ろう」


「…ふぇっ…ユキィ」


「…よしよし」


子供みたいに泣きじゃくるわたしの頭を、ユキは優しくポンポンしてくれる。

まるでお母さんのみたいだ。


不思議なの。

甘えたくなっちゃうんだ。