それは流石に嘘だろう、と思った。
“アイちゃん”というのは我が校のアイドル、保険医の事だ。年頃の少年達は常に細い華奢なラインを覆っている白衣にも心臓を反応させてしまうらしく、しょっちゅう彼女の話題を挙げているのを目にする。
幾ら何でも教師と生徒、例え禁断の関係になっていたとして。分かり易い格好で学校を闊歩するのなど言語道断。
―――たかなしくんは、そこまで馬鹿ではない。
「へえ、流石たかなし」
わたしの学校には“たかなしくん”が居る。
「あの見た目だもんなあ。色々許されるんだろうな」
たかなしくん。
たかなしみゆきくん。
「分かる。同じ男でもドキっとする事あるもんなあ」
名前まで美しい彼は、見た目も麗しい。
遠くに居ても人目を惹くその容姿で、彼は常に話題の中心に居た。現にわたし達のグループなど全くクラスも違えば関係など一つも無い赤の他人である筈なのに、こうして噂話に花を咲かせるのだ。
たかなしくんは、何処に居ても話の中心になるとても有名な人。

