歌を口遊む小鳥はいつか、大空へ羽ばたく。



 翌日。


「なあなあ、聞いた?」


 登校早々、教室に駆け込んで来たその人は一直線に脇目も振らずわたしの下までやって来た。朝だというのにきちんとセットされた髪型は、彼のこだわりを感じさせる。

 朝の身支度に相当な時間を使うらしく、髪の毛を乱されたくないのか体育は実に適当に流しているらしい。


「聞いたって何をよ」


 前の椅子に座り――と言っても自分の席では無いのだが――机に細い脚を投げ出してネイルのチェックを念入りにしていたキョウちゃんが真っ赤なルージュの引かれた唇を動かす。

 やはり怠そうな姿勢は変わらないのに、彼女は決して学校に寝坊などと理由から遅刻して来る事は無い。本人曰く、“小学生の頃から早寝早起きを心掛けている”らしい。それを最初に聞いた時は卒倒するかと思った。驚きだ。


「たかなし、アイツ今度はアイちゃんだって!」

「アイちゃんだとおおおおう!?」


 丁度登校して来たばかりの少年が滑り込むように駆け寄って来る。


「マジでアイちゃんなのか?あの?あの保健室の?」

「昨日見た奴が居るらしい」

「見たって――見たって、え、何を?」

「たかなしが保健室から乱れた制服姿で出て来るのを!」