歌を口遊む小鳥はいつか、大空へ羽ばたく。



「ああ、そうだ。昨日皆でまた遊ぼうって言ってたの憶えてる?」

「へ?う、うん」

「コウちゃんがね、次の土曜日はどうかって」

「ど――土曜、土曜?うん、アタシは平気!寧ろいつでも!今日でも!」

「うん、そう伝えとくね」


 それだけだった。

 「じゃあね」と微笑み、彼は立ち去って行く。その去り際があまりに鮮やか過ぎて、一体何人が彼が居なくなった事に気が付いただろう。


(ホント、人間じゃないみたい)


 先程まで彼が立っていた其処からはどことなく甘い香りが漂っているような気すらする。


「……た、たかなしって喋るんだな」


 数秒か数十秒か、それとも数分か。

 当然の事を驚きの表情で呟いたショウちゃんに、エータは呆れたように苦笑した。


「そりゃあ喋るでしょ、人間なんだから」

「でもさあ、やっぱ見れば見る程人間離れした外見だよなァ、アイツって」


 わたしの心の声を代弁するかのような言葉に内心激しく同意しつつ、有名人である彼が去って行った方向を視線で追い掛ける。

 しかしショウちゃんもユキちゃんもエータも。その他クラスメイト達も。

 同じように、既に其処には居ない少年に意識を持っていかれているのが空気に乗って伝わってきた。

 風も無いのに甘い魅惑的な香りが支配しているような。

 ふわふわとした雰囲気に呑み込まれてしまいそうな。

 其処だけが別空間であったかのような。

 ―――誰も彼もが、彼に魅了されるのだ。