歌を口遊む小鳥はいつか、大空へ羽ばたく。



 一度座った椅子から再度腰を僅かに浮かし、彼女は前傾姿勢になる。その勢いに押されて、下がれる目一杯まで背筋を反らせば後ろの机に思い切りぶつかってしまった。

 そして目の前の彼女は、衝撃的経験をたった一言で告げるのだ。


「―――たかなしが来てた!」


 ひゅっと誰かが息を呑んだのが聞こえた。

 わたしではない。

 エータでもない。

 誰かは分からない。

 ただその興奮に満ちた大声と特別な名前に反応して、教室がしん、と静まり返った。それに改めて影響力の大きさを感じる。

 自分でもクラスが異様な雰囲気に包まれた事を感じたのか、珍しく周囲を気にした様子で視線を巡らせたキョウちゃんはややあってどこか気まずそうに口を噤んだ。

 それを見てエータが苦笑気味に肩を竦める。しかしその表情にはやはり驚きが滲んでいる。


「おはー、って、ん?何だ、この空気?」


 遅れてやって来たショウちゃん、そして後に続くユキちゃんが挨拶しつつ腰を下ろすのと共に、小首を傾げた。