同期っていうのも、なんとなくしか雰囲気が掴めない。

要するに同じ学年でしょ、というのはわかるんだけど、たぶんそれだけじゃないんだろう。

健吾くんが日々のほとんどを費やしている仕事というものは、私にはこんなふうに、想像力も届かないくらいの、ぼんやりした遠い世界でしかない。



「その制服、いくと同じ高校だね」

「あ、はい、たまたまですけど。青井さんはどちらでした?」

「美菜でいいよ、もしくは青菜とか。ずっとそう呼ばれてた」

「あはは、じゃあ、美菜さんで」

「私は二高。郁実ちゃんたちのセーラーに憧れたなあ」

「二高のブレザー、かわいいじゃないですか」

「セーラーは永遠の憧れなわけよ!」



言いながら、大判焼きをむしるようにかじる。

そ、そうですか。

きれいなのに、気取らない人だな。


そのとき、カーナビのあたりにくっついている携帯が軽快なメロディを発した。

【着信:生島健吾】とある。



「あら、いいタイミング」



美菜さんは私に向かって人差し指を口に当て、いたずらっぽく微笑んでみせると、ちょんと指で操作して通話に切り替えた。

薄いピンクオレンジに塗られた爪が、清潔感もあってきれいで、思わず目が吸い寄せられる。



「はいはい」

『お疲れ、なあN企画さんの更新ていつ? それによってはライセンスをひとつ、こっちに融通してほしいんだけど』

「9月末よ、できないこともないけど、なんで?」

『俺のお客さんが、けっこう近々の入れ替えを検討しててさ、もともと提案してたハードが、S社のだったんだ』



スピーカーから聞こえてくる健吾くんの声は、なんとなくいつもより、鋭い気がする。

仕事中の声。



「あー、生産終了」

『そう。だいぶ先の話だけどさ。だからってもう永久には使えないってわかってるもんを納入するとか、できないだろ』

「真面目ねえ」

『お前も今外だよな? 後で調整させてもらってもいい?』

「いいわよ、私はあんたの大切なお姫様ともう少しおしゃべりしてから戻るから」



健吾くんが黙った。

やがて困惑ぎみの声が聞こえてくる。