ごめんなさい。

ごめんなさい…。

テーブルに額がつきそうになるくらい、ひたすら頭を下げた。

もう、ごめんなさい、それだけです、はい。



「まあいいや。会わないって、電話はしてもいいんだろ?」

「え? うん、えーと…そこまで考えてなかった」

「まあ、郁は勉強に専念しないとだし、あんまり話すのも本末転倒か。でも心配だから、一言でも毎日連絡入れるようにするよ」



携帯を見ながら、うーんと考えている。



「時間決めるか。夜11時までに、俺から必ず連絡する。それまでになかったら、その日はもうないってことだから、無駄に待つな」

「ない日もあるの」

「飲んで帰って即寝とか、俺だってあるからな。歯磨きみたいなもんで、一日飛ぶときくらいある。でも二日続いたらおかしい。そのときは気にして。孤独死してるかも」

「あは」



急にこれからの日々の具体的なイメージが固まってきて、私はすごく安心した。

なんだか、思ったよりさみしくないかもしれない。



「私も毎日する」

「いらない。俺は郁からの連絡は待たないから」



えっ。

言い切られて、なんで、と思わず聞いた。

健吾くんは携帯を胸ポケットにしまうと、にこりと微笑み。



「俺が待つのは、また会える日」



卑怯なくらい優しい声で、そう言った。



「働いてたら半年なんてすぐだ」



私は再び、おしぼりで視界をふさいでしまったので、顔は見えなかった。

でもきっと、いつだって私を安心させる、あの微笑みを浮かべているってわかる。



「受験生にとってもすぐだ。要するにすぐだ」

「…受験生って言わないで」



ひどい涙声。

こんな姿を最後にしたくないのになあ。